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第5回スキナベーブ赤ちゃんエッセイコンテスト


入選 一般部門
みそオニ 沖縄県 主婦 36歳 砂川 雅美
 昼下がり。
 私は娘に、今日3回目のミルクを飲ませている。
 アパートの部屋の外では、子供たちがかくれんぼをして遊んでいる。
 「もういいかい」
 「まあだだよ」
 しっかりしたお兄ちゃんやお姉ちゃんの声に、まだたどたどしい声が混じっているのが聞こえる。夏休みだからか、小さい弟妹を連れてきて一緒に遊んでいるようだ。

 いまの子供たちにも、「おみそ」のルールはあるのだろうか。

 私が子供だった頃、まだ正規のルールで遊ぶには幼すぎる年少の子は「おみそ」と呼ばれ、その子には特別ルールが適用された。お兄ちゃんのそばでお尻が丸見えのまま一生懸命に「隠れ」ているおみその子がいても、オニは見えないふりをして近くを探すのである。おみその子はドキドキしてお尻を引っ込め鬼が通り過ぎるのを待った。また、おみその子がオニになりたがったときは「みそオニ」として受け入れ、そのときはみんなわざと見つかりやすい場所に隠れたりした。温かくて優しい「おみそ」のルールは、子供社会のなかで当たり前のように存在し、ごく自然に受け入れられていた。

 結婚して7年目、30半ばにして初めての子を授かったと分かったとき、私は素直に嬉しかった。夫と待ち望んだ我が子である。「私たちのところにきてくれてありがとう」と、お腹の子供に毎日感謝した。
 一方で、子育てによって確実に生じる仕事のブランクに対する不安もあった。子供中心の生活のなかで、いままでのように仕事に没頭することは当分無理だ。復帰したとしても、子供が小さいうちは周囲に迷惑をかけるのではないだろうか。いままで仕事人としての自分に価値を見いだしてきただけに、その支えを失うことが、こわかった。

 そしていま、私は無事に元気な女の子を出産し、この手に抱いている。彼女はまだ、自分で話す事も歩くこともできない。泣いて自分の欲求を伝え、欲求を満たす私の存在を確認し、その愛情を栄養にしながら育っていく。私も、新米ママとして毎日とまどいながらも少しずついろんなことができるようになる娘の成長を糧に毎日を過ごしている。私たちは、子としても母としても、始まったばかりの半人前プレーヤーだ。これから二人で、新たな社会と向き合っていくのだ。
 「おみそから、始めればいいよね。」
 ミルクを飲み終わり満足そうに寝ている娘に、そっと話しかける。娘はいずれ、自分の足で立ち、私の助けなしでも歩けるようになる。何年かしたら外の子供たちとも一緒に遊びだすだろう。初めは「みそオニ」として、そのうち本当のオニになって。そうやって外の世界を知り、社会の秩序を学んでいくのだ。
 私も、最初は「みそオニ」として、そんな彼女と一緒に成長していこう。子を持つ女性がもっと社会参加に積極的になれるような、優しい大人社会をつくっていきながら。
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