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特別賞 |
一般部門 |
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「にんまり」
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神奈川県 主婦 30歳 関口 純子 |
小さな命を授かったのは、母が病に倒れた2ヵ月後のことだった。友人との旅行や食べ歩きが趣味だった母。働き者だった母。そんな母はリハビリで5分程度散歩するのがやっとの体になってしまい、その顔から笑顔は消えていった。 「母に生きがいを作ってあげたい。」 そう思った私は、2年後に予定していた子作りに少し早めにチャレンジすることにした。そうは言っても、そんな都合よくできるものなのだろうか。もし赤ちゃんのできない体だったら・・・。そんな不安もつかの間、神様はすぐに新しい命を授けてくれたのだった。 「ありがとう」 私は誰にともなく呟いた。 診察を受けたその足で、すぐに母の元へ向かった。 「お母さん、お母さん!赤ちゃんができたよ!!」 「え・・・。」 一分ほどの沈黙。そして 「にんまり」 母は笑った。にんまりと声に出したわけではない。だが、まさしくにんまりとはこの笑顔のことを言うのだというほどの「にんまり」だった。 その後の母の回復はぶりは目覚しかった。私のお腹がどんどん大きくなるにつれ、母はどんどん元気になった。 この先の人生を悲観ばかりしていた母が、私の体の心配までしてくれるようになった。散歩に行くと母より私のほうが先にばててしまう。定期健診にはいつもついてきて、超音波画像を興味深げにに見つめていた。
そしてついにその日はきた。突然の破水。その後微弱陣痛に苦しみながら、病院で2日間を過ごした。母は何度も来院し、弱音を吐く私を勇気づけ、懸命に腰をさすってくれた。 母が病気になって以来、私は常に母を気遣い、気を張っていたように思う。だがこの時は、何も考えずただただ母に甘えた。痛さの中で、何か心地よさを感じた。 そして42時間の陣痛の末、わが子は誕生した。元気な男のだ。病室では毎日わが子を囲み笑顔の花が咲いた。 赤ちゃんのパワーってすごいと思う。絶望や不安で押しつぶされそうになっていた母や私を、こんなに小さな体で救ってくれたのだ。 「生まれてきてくれてありがとう。」 そう声をかけた私に、わが子は笑顔でこたえてくれた。 「にんまり」 と。
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