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入選 |
一般部門 |
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お豆のマメコ
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東京都 会社員 24歳 藤巻 優 |
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昨年の春、姉が結婚した。結婚式当日のことは今でも覚えている。姉はもちろん、親族全員が喜びの表情でいっぱいだった。そんな中で私は、姉がいなくなってしまう寂しさで溢れそうになる涙をこらえる事に必死だった。 私と姉は双子で、母のお腹の中からずっと一緒にいた。それなのに、急に引き離されてしまう気がして、寂しくて仕方がなかった。そのためか、姉の結婚相手である義兄とは、なかなか仲良くなれずにいた。
あの結婚式から約一年が過ぎた今年の春、姉から一本の電話がかかってきた。「実はね、お知らせがあるんだよ。」と前置きしてから、姉が嬉しそうに言った。 「あのね、私、赤ちゃんができたんだよ。今度ちゃんと報告しに行くから。赤ちゃんの写真も持っていくね。」 そう言って、姉は電話を切った。ツー、ツー、ツーという音が耳に残った。
数日後、姉夫婦が幸せそうな笑顔でやって来た。挨拶もそこそこに、姉はカバンの中から一枚の黒い写真を取り出した。 「はい。これが赤ちゃんの写真。まだお豆みたいに小さいの。」 その黒い写真には、小さな白っぽい丸が写っていた。まだ人の形はしていない。どうやらそれが赤ちゃんらしかった。 「ふぅん、お豆ちゃんかぁ。じゃあマメコって呼ぼうね。」 母はそう言って、「マメコ」と姉のお腹に向かって呼びかけた。 「もし男の子だったらどうするの?マメタかマメオだよ。マメコじゃないよ。」 私は何となく面白くなかった。しかし、母はそんなことはお構いなく、 「いいのよ、そんなことは。マメコ、元気で生まれてくるのよ。」 と、再び姉のお腹に呼びかけていた。
数日後、私が仕事から帰ってくると、居間から母がものすごい勢いで飛び出してきた。 姉が切迫流産をしかけて入院したというのだ。出血が止まらないということだった。 私の中の血が、サーっと冷たくなった。 姉は大丈夫なのだろうか。マメコは大丈夫なのだろうか。 数日前まで元気だった姉が、今は病院のベッドの上にいるのだ。そして、新しい命まで危険な状態にあるということが信じられなかった。 今、私に何ができるのだろうか。 私は携帯電話を手にとって、義兄にメールを打った。「お姉ちゃんとマメコを助けてあげて」と。 携帯電話を握り締め、ただひたすら祈った。マメコ、お母さんのお腹にしっかりしがみついているんだよ、離れたらだめだよ、と。
しばらくすると、義兄からメールが返ってきた。 姉もマメコも今は落ち着いているが、大事をとってしばらく入院するということだった。そして「お姉ちゃんとマメコは、絶対守るよ」とあった。 私は、この人が姉の結婚相手でよかったと思った。マメコのお父さんでよかったと思った。私の義兄でよかったと思った。
その後、姉とマメコは順調に回復し、退院した。そして私は、義兄と時々メールをするようになった。 「パパともっと仲良くしてよ」とマメコに言われなくて済みそうだ。 マメコが生まれるまで、あと4ヶ月。 マメコ、元気に生まれておいで。
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