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入選 |
大野知永子 |
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「ふーくん」
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大阪府 主婦 41歳 |
驚いたことに、私の赤ちゃんは、とんがり帽子をかぶってやって来た。 吸引分娩で生まれたために、頭が三角だったのだ。 「あ、あたまが・・・」 これが、赤ちゃんと初めて対面した私の第一声だった。 「大丈夫ですよ。元に戻りますから。」 看護師さんの言葉通り、数時間後におっぱいを飲みにやって来た赤ちゃんの頭は、普通の形になっていた。 良かった。 ようやく感動の対面。 両眼を開けることができないようで、片眼はつむったまま、ミャーミャーとネコみたいに泣いている。 なんて小さくて、なんてかわいいんだろう。 お腹の中にいた時に呼んでいたように、そっと「ふーくん」と呼んで抱きしめた。 朝起きて夜眠るのがあたりまえだった生活は、ふーくんの登場により、24時間が3時間×8のサイクルに変わった。 朝も昼も夜もおかまいなく、おっぱい、おしめ、おっぱい、おしめの繰り返し。 そんなことも全然苦にならないくらい、ふーくんとの生活は、幸せに満ちていた。 毎日が驚きと発見の連続で、一日はあっという間に過ぎていった。
ある日、いつものようにふーくんに話しかけていると、ふーくんがじっと、私の顔を見つめているのに気がついた。 ふーくんの眼が見えてきている!? わざと顔を動かすと、それを追って、ふーくんの眼もキョロリと動く。 うっすらと、ものが見えてきているのかもしれない。
こんなこともあった。 うつぶせ寝をしていたはずのふーくんが、ご飯の用意をしている間に、仰向けになっていた。 えっ?寝返りしたの? ふーくんに聞いても、私の顔を見て笑っているだけ。
いろんなことが出来るようになる時、まっ先に眼にするのは、いつも私だった。 一日中、ふーくんとずっと一緒にいたから、ふーくんのことなら何でも、私がいちばん良く知っていた。
パパは、そんな私をうらやましがって、ふーくんに「パパ」という言葉を覚えさせようとがんばっていた。 仕事から帰って、ふーくんを抱き上げては、 「パパですよー」 お風呂に入るときも、 「パパとおふろですよー」 その甲斐あって、ふーくんがいちばん最初に話した言葉は「パパ」だった。 もちろんパパは大喜び。
赤ちゃんが家にいる。
それだけで、一日、一日がとても大切に思える。 楽しいことがいっぱいあって、パパも私も笑顔になる。 小さな寝息をたてて眠るふーくん。
ふーくん、よく来てくれたね。 これからも、ずっとずっと一緒にいようね。
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