「幸せのおすそ分け」|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第11回】~ 赤ちゃんがくれるチカラ ~

佳作

・「幸せのおすそ分け」

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鶴田理恵子
神奈川県  主婦  43歳

17年前、結婚式を終えた数ヶ月後。
わたしの父は旅行先で倒れ、帰らぬ人となってしまった。悲しみに暮れる日々の中、わたしの妊娠が分かった。誰よりも孫の誕生を楽しみにしていた父を思うと、やりきれない思いでいっぱいだった。実家の父の仏壇に報告そして、母に告げると母は「よかったよかった」と涙を流し喜んでくれた。悲しみばかりの生活が一変した。夫は女の子、男の子の名前を何度も何度も考えたり、おばあちゃんになる母は毛糸をたくさん買ってきて、おくるみや靴下などを次々に編んだ。「女の子だと思うよ」母はいつもそう言った。無事に生まれてきたら、どちらでもうれしい。「昔の人の感!」かしら?母の「女の子」への思いは毛糸の色にも影響していた。薄いピンク色やお花のアップリケまで。このままじゃ、もし男の子だったら、どうしよう。「おかあさん、私が通う病院は赤ちゃんが生まれるまで、男女どちらか知らせてもらえないんだけど」そういっても「女の子だよ、きっと」と笑顔で答えるばかり。父親の死で臥せっていた頃の母がこんなに笑顔で毎日を過ごしていることが何よりうれしかった。
私は毎日、お腹の赤ちゃんと会話をした。「おはよう」「いいお天気ね」一緒に音楽を聴いたり、ダンスもした。買い物では「プリンにする?ヨーグルトにする?」すると「ケーキが食べたいよ」とお腹をけって答えることもあるほどだった。お腹の赤ちゃんは、家族に夢と希望をたくさん与えてくれた。
出産予定日を一日過ぎて陣痛がきた。いよいよだ。この日のために呼吸法を練習したり、出産を経験した友達に話しを聞いたり、いざ準備は出来ているはずだったが、やはり不安でいっぱいだった。「もうすぐ会えるよ。みんなにもうすぐ会えるよ」お腹の赤ちゃんからの声がする。「そうね。一緒にがんばろうね」
緊張と苦しみの中にも、わたしは女に生まれた幸せを感じることができた。自分を産み育ててくれた両親へ感謝の気持ちと、もうすぐ赤ちゃんに会えるうれしさで満たされていた。「みんなに早く会いたいよ。ママがんばろうね」お腹から赤ちゃんの声が何度も聞こえた。無事に3140gかわいい女の子が誕生した。
『女の子』
退院後はしばらく実家でお世話になった。母がぽつり。「いつだったか、お父さんがね。俺は生まれ変わるとしたら次は女に生まれるぞって言ってたの…」女の子が生まれると言った母には父の思いが込められていたことをはじめて知った。確かにこの娘は父の命とつながっている。おじいちゃんとつながった力。
それから赤ちゃん中心の生活が始まった。思いどおりにいかないこともあったが、娘にはみんなを幸せにするパワーが依然あった。散歩に出れば、たくさんの人が声をかけてくれた。困っているときは助けていただき、近所の方とコミュニケーションが増えた。他人や社会に関心を持つようになった。近くの公園にかわいい花が咲いていたり、旬の野菜が美味しかったり、素敵な星空を眺めたり、娘との生活は、大人になって忘れかけていた大切なことを教えてくれた。赤ちゃんの力って無限大。その小さな笑顔は大きな幸せを、小さな涙は優しさを、小さな寝顔は希望と平和を与えてくれたのだ。
宇宙に中心は無いというけれど、世の中の赤ちゃんが壮大なこの宇宙の中心であると思う。たくさんのパワーの持ちぬしなのだから。街を歩いて、ふとベランダに干された小さな産着が風に揺れていたりすると、パワーをいただいた気分になる。幸せのおすそ分けに感謝する。

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