ワダツミ|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第12回】~ 赤ちゃんへの手紙 ~

入選

・ワダツミ

埼玉県  会社員  男性  33歳

この小さな手足が、倍以上の大きさへとなるのか…。
私は赤子を見て不思議に思っていた。
妹が出産して実家へと戻ってきている。産まれたのは女の子だった。
両親は初孫とあってか目をキラキラさせ、終始笑顔で赤子を迎えていた。
私はというと…可愛いとは思えど、両親のような満面の笑みで赤子を迎え入れるような気持ちには特別ならなかった。
昔、私が幼少の頃から両親は共働きで、妹達が赤子の頃から嫌でも面倒見てきていた事も関係しているのだろうか?
それ故にか分からないが、妹に産まれた赤子に対して余りに感慨深くは無かった。
妹と赤子は一ヶ月実家に居るらしい。
赤子が家に居る暮らしから二週間後。休日でまったり過ごしていた私に「少し出掛けて来るから面倒見ててもらえるかな?」と、妹が言ってきた。
両親も出掛けており必然的に私しか居ない。
「分かった」と一つ返事をした後、妹は出掛けていった。
私が断る事等考えてもいないような準備の良さだった。
妹が出掛けて行って数分後、赤子が泣き出した。
様子を見に行く。
おしめが濡れている様子は無い。
っという事は乳だろうと思い、妹の冷凍母乳を取り出して準備をして与えた。
人肌まで温めてる間にかなり待ちわびたのか、一生懸命に乳を飲み込んでいく。
家に来た当初はたどたどしく飲んでいたしぐさも、今では随分慣れたものだ…。
こんなに小さくとも一生懸命に生きようとしているのだろうか…そう思うと何か胸にくるものがあった。
やはり余り一気には飲めないようで、少し飲んだら満足したのかまた眠りへと入っていった。
無邪気にスヤスヤと眠るその姿は、見ているこちらもなんだか幸せな気持ちになった。まるで赤子の周りだけ穏やかな時空があるようだ…そんな心地良さを感じた。
妹が出掛ける度に赤子の面倒を見ていた。いや、家に居ても面倒を見る事が度々ある始末だった。
ある日、泣く赤子へと向かう途中で足を滑らせてコケてしまった事があった。
赤子を見ると口の端が少し上がった気がした…気のせいだろうか。
いや、泣きっ面なのに笑ったような顔をしている。
あれだけピーピー泣いていたのに、分からないものだ…。
ふと、さっきまで仕事や婚約者の事で悩んでいた自分が馬鹿らしくなってきた。
産まれて間もないこの子のほうが大人なように思えた。
まるでそれくらいで騒ぐな大人と言っているような。
家に赤子が来てから、夜中だろうが関係無しに泣き声が聞こえてきた。泣く事でしか自分の欲求を訴えられないのだろうから仕方が無いが、その度に妹は起きて赤子に向き合っている。
生命を育てる事の大変さを垣間見ている感じだ。
自分の時間を費やして育むその行動に、何か考えさせられた。
私にも婚約者が居るが、正直子供が欲しいとはお互いそんなに思ってはいない。
先の未来を考えたら確実に負担しか子供には与えられない。
そのような事を色々考えてしまい子供を持つ事への熱が冷めていく…。
妹が帰る日。一ヶ月なんていうのはあっという間だ。
「それじゃ皆ありがとう、また落ち着いたら来るね」
寝不足で皆が目の下にクマを作りながらの挨拶は滑稽だった。
赤子は相変わらず寝ていた。
そんなに寝て何があるのだろうかっと少し笑えた。
「また来いよ」
優しく赤子に囁いてみた。
すると…赤子が目をうっすらと開けて私を見た。
目が見えるのかは分からないが、なぜかジッと私を暫く見てからまた目を閉じて眠りについた。
口元は笑っているから「また来てあげる」っという意味なのだろうか。
赤子が去った後の家はとても静かだった。
妹を抜きにしても静かだった…。
凄く寂しさが心のうちを走った…その理由はなんとなしに分かった…。
先を見据えてうだうだ考えるよりも作ってみるのも良いかもしれない…私は婚約者とまた子供の話をしてみようと考えた。
あの柔らかい体温、乳臭さ、泣き声、純粋な瞳、全てが今は愛しく感じる。

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