【第13回】~ 赤ちゃんとのふれあい ~
入選
・赤ちゃんが連れてきてくれた応援隊
奈良県 主婦 女性 31歳
ここ半年、外出すると、よく声をかけられます。
私は有名人ではありません。残念ながら美人でもありません。たぶん不審者でもありません。私は赤ちゃん連れのただの30代主婦です。
3人目の赤ちゃんが去年の10月に我が家にやってきました。
電車で乗り合わせた女子高生のおねえさんたちは、かわいいといいながら手を握ってくれ、そのあとみんなで「赤ちゃんって癒されるわー」なんて話してくれています。
私の父くらいの年の男性は、自分のお孫さんが東京にいて、年数回しか会えないことを話してくださったり、お子さん連れの 同世代の女性は、「こんな時代もあったね」と、自分のお子さんを見ながら聞いたことのあるような言葉をかけてくださいます。
そして圧倒的に多いのが、やはり子育てを終えられた女性です。「今何か月くらいね」、から始まり、いろんなことを教えてくださります。
1人目と2人目は年が近く、それぞれの赤ちゃん期、決まった方と話すことはありましたが、そんなに見知らぬ方と話すこともありませんでした。
それに比べて、習い事や幼稚園の送迎、おでかけと出歩く回数が上2人に比べかなり多く、早くから出歩かざるを得なかった3人目。人慣れしているせいか、3人目はどこでもおとなしく、人見知りもあまりありません。
また、私が1年前引っ越してきたこの街は、30年前に開発が始まったいわゆるニュータウンです。街ができた頃からお住まいのご夫婦が多く、お子さんが独立された世帯が多い中、私の近所では、赤ちゃんは比較的珍しい存在です。そういう土地柄もあり、声をかけていただく機会が多いのだとおもいます。
3人目の妊娠がわかり、口数の少ない夫は、3人目の報告に落ち着いた様子でしたが、私は、正直、驚きました。仕事や勉強をはじめ、少し生活に余裕とリズムができていたと感じていた頃でした。
おむつがえ、夜中の授乳、離乳食、トイレトレーニング、精神的にいっぱいいっぱいだった子育てを、上の子たちを世話しながらもう一回できるのだろうか。私は1人っ子で、兄弟姉妹のいる生活すら想像できなかったところに、3人の子供を持つなんて。それに、将来の学費や食費。ずぼらなくせに心配性な私は、なんだか落ち着かない気持ちの妊娠期間を過ごしました。
でも、日に日に大きくなるお腹を見るにつれ、少しずつ会える日を楽しみにするようになっていました。
予定日付近に共働きの両親に休みをとってもらい、上2人の世話を頼みました。3792グラムの赤ちゃんが生まれ、喧嘩の多い上2人も、3人目をかわいがってくれました。夫もとてもかわいがり、私も赤ちゃんがただ愛おしく、何とかなると思うことはあっても、不安を感じることはなくなりました。
でもやっぱり、いろんなことがうまくいかない日、自分の調子があまり良くない日、子供達のぐずりが止まらない時、感情に任せ怒鳴って後悔している時、人に迷惑をかけた日、弱い心が折れそうになります。私は1人の子さえ十分に面倒も見てあげられていないと。
そんなとき、3人目である赤ちゃんに声をかけてもらうと、なんだか強くなれるのです。
かわいいねと声をかけていただき、この子の笑顔一つでお話しする方も笑顔になってくださる、そんな素敵なふれあいをこの子は私にくれるのです。家族や友人だけでなく、知らない方々までも、私達を応援してくれるような気がして、心強さを感じるのです。
子育てを終えられた女性から、励ましとして、よく似た言葉をかけていただきます。「子供が大きくなるまでの今が、人生の一番の華よ」というものです。
でもその言葉をくれる先輩方は皆イキイキしていて、先輩こそ一番の華、真っ最中では?と思うほどです。
私もそんな余裕のアドバイスができるイキイキした先輩になれるよう、まだ赤ちゃんの3番目、そして上2人の子と、なんとかやっていきたいと思っています。