一緒に暮らすという事|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第13回】~ 赤ちゃんとのふれあい ~

入選

・一緒に暮らすという事

長崎県  主婦  女性  30歳

夫の両親との同居が始まって一ヶ月位で、私はお腹に娘を授かった。
だから義両親との接し方があまりわからないうちに、あっという間にお母さんになってしまった。
この家は、「イクメン」「イクジイ」等の言葉ができる遙か昔から、子育ては男性も含め、家族皆で協力してやってきた家らしい。
オムツ換えは全員できて当たり前。
お風呂は男の仕事。
会社勤めの夫もできる限り娘をお風呂に入れているが、帰りが遅くなると義父がお風呂に入れる。
怖がらないように、丁寧に優しく入れているので、泣くことは滅多にない。
抱っこで送り迎えする義母との連携プレーも素晴らしく、娘もご機嫌でお風呂へ行って帰ってくる。
それに加え、義母は私が怖じ気づいてできない爪切りや鼻掃除もスイスイやってのけるし、娘が泣いていても抱っこですぅっと寝かせてしまう育児の大ベテランだ。
ミルクとの混合栄養だったので、ミルクは私以外が交代で飲ませる事にした。
ミルクを通じて娘との絆を深めてもらおう、という私の考えだ。
みんな楽しそうにミルクを飲ませている。娘も嬉しそうだ。
何不自由ないように思えた、育児開始3ヶ月目。
私の心の中では後悔の気持ちが渦巻いていた。
里帰り中はずっと一緒にいたのに、帰ってきたら昼間は義両親が娘にべったり。
夜は、娘とふれあう時間の短い夫になるべく抱っこさせるため、私は授乳中と夜中しか抱っこできない。
母乳を飲ませられない時間帯には、「姿を見たら泣く」という理由でコソコソと別室へ移動する事もあった。
ミルクを他の家族に任せた事を後悔した。
「私にも世話をさせて」と言えない自分を悔やんだ。
抱っこしたくても義両親の腕から離される事のない娘を遠くに感じた。
抱っこの時間も短いので、一番下手。娘も心なしか、嫌がる。
「あんたはこの子のたった一人のお母さんなんだから」と言いつつ、二人で楽しそうに孫の世話をする義両親を前に、いっそ母乳をやめてミルクにしてしまえば、義両親も夫も娘も幸せなんじゃないか、と一人で泣いていた。
大きくなるにつれ、世話をする時間が増えたが、
娘をとられるまい、とられるまいと必死になっていた。
娘が9ヶ月になった、そんなある日。
義父が白内障の手術をする事になった。
入院こそしないものの、絶対安静。
夫から一通り教わったものの、上手く入れられなかったら二度と一緒にお風呂に入れないんじゃないかと不安で仕方なかった。
義母から娘を預かる。
連日の暑さで汗疹ができたお尻を沐浴剤につけて、深呼吸。
「よーし、お母さん、頑張るからね。」
声をかけると娘がニコッと笑った。
全身を洗っていると、腕も足もいつの間にかこんなに大きくなっていたんだなぁ、と改めて思えた。
髪についた泡を流すとき、ふぇっと泣きかけたが、歌を歌うとニコニコしてくれた。
その時、私は気がついた。
いつの間にか、私は私なりに、育児のコツを覚えていた事に。
ご機嫌な娘を見ながら、私は、義母に言われた言葉を思い出した。
「あんたはこの子のたった一人のお母さんなんだから。」
どんなに育児が下手でも、母乳が足りなかったり出なかったりしても、娘にとって、私はお母さんなんだ。
なのにどうして、私はつまらない意地を張ったり、遠慮して何も言えなかったりしたんだろう。
誰と、戦っていたんだろう。
その日のお風呂を通じて、私は、母親としての役割を奪われた訳ではない事、そしてちゃんと母親になっているんだという事に、やっと気がついた。
義父の目の手術も無事終わり、義両親が揃って仕事に出ている間に一人で子育てをする時間が増えた。楽しい反面、自分の時間が一切とれず大変な思いをして、一人で子育てをしているお母さん達の苦労を知った。
やはり子育ては、できるのならば、適度に皆でやった方がいい、そう思った。
私の「同居生活」は、やっと、始まった。

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