じゅんちゃんのはじめてのお風呂|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第4回】~ はじめての沐浴 ~

入選

・じゅんちゃんのはじめてのお風呂

【看護師助産師部門】
鹿児島県  主婦  37歳

「初めての沐浴」というタイトルを目にして私が看護師をしていた頃のある出来事がよみがえってきた。
今から10数年前、看護学校を卒業して東京のある大学病院の小児科病棟で働いていた。主に先天的心疾患を持つ乳幼児が入院していて、新卒の私には見るもの、聞くものすべての体験が初めてのことばかりだった。
その日は、乳児室担当の勤務。一人の乳児の沐浴指導に立ち合うことになった。
その子は確か‘じゅんちゃん‘と呼ばれる生後4ヶ月ぐらいの
男の子だったな。先天的な心奇形を持ち、この世に誕生するや否や、気管内挿官、点滴など生命維持装置につなぐことを余儀なくされた小さな命。
体重が少しでも増え、全身状態を少しでも手術に耐えられる
ようベストな状態にもっていくことが目標で、一度も自宅に帰ることなく病院で生活していた。
じゅんちゃんは、自身の強い生命力であらゆる困難を乗り越え、無事手術を終え、術後の経過も順調。傷口の抜糸も済み、
じゅんちゃん母にとって、初めての沐浴を迎える日となった。
いつもの面会時間よりもやや早くじゅんちゃんの母はやってきた。
「今日初めて沐浴をするんです。」と、病室に入ってきて、肌着
タオル、石鹸など必要なものをさっと準備して、待っていた。
全身から喜びがあふれていた。初めての子、おそらく母親学級なので沐浴練習もしていただろう。出産後、思わぬ展開に‘初めての沐浴‘を迎えるまでじゅんちゃんの母は何度涙したのだろうか?
やっと元気を少し取り戻した小さな我が子をしっかり抱き、ゆっくりお湯につけていく。
じゅんちゃんの胸には痛々しい傷跡がくっきりと。。この世に
生命を吹き込んでくれた母の手の中で、心地よさそうに浮かんでいた。どの子もやるように目をつむり、両手をグーにして、母の
やさしい愛を注がれていた。
沐浴指導の立場で親子の感動の一瞬に立ち合えたことを心から
うれしく思うのでありました。

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