絵本タイム|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第7回】~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

・絵本タイム

埼玉県  公務員  29歳

「がたんごとん がたんごとん ・・・」
今日も恒例のあることが始まった。
お腹の中にいる赤ちゃん(夫婦の間では通称「ベビちゃん」と読んでいる)に対する絵本の読み聞かせである。
25週が過ぎたころ、お腹の赤ちゃんは既に耳が発達してきていて、お腹の中からいろいろな音を聞き分けるということを知り、初めて迎えるベビちゃんに、早速、絵本の読み聞かせを夫婦2人で始めた。最初は絵本を2冊、夫と私がそれぞれ1冊ずつ読み聞かせるスタイルだった。絵本の読み聞かせなど一度も行ったことのない2人は、最初は照れながら、また「棒読みになっている」「リズムが悪い」などと言い合いしながら、試行錯誤で始まった。
読み聞かせを始めて3日が過ぎたころ、さらに2冊、新作が増えた。夫が自分で絵本を探してきたのだ。そして、読み聞かせのスタイルも変わった。私は胎動が一番感じやすいように横たわり、夫がその横でお腹のベビちゃんに語りかけるようにになった。そう、私は1冊も読み聞かせをすることはなく、夫が全て読むようになった。
読み聞かせを始めて、8日目。ベビちゃんもついに読み聞かせについて反応を見せ始めた! いつものように読み聞かせを始めると、お腹の中でぐるぐると回転したり、また「ぴこっ ぴこっ」と動いたり、盛んに胎動を行うようになってきた。胎動は感じるだけでなく、目でも確認できるほどお腹が変形していった。本の種類や読み方によってもその違いがあり、「この本が好きなのかなあ」とか、「この読み方は、いまいちかなあ」とか、話し合ったりした。ベビちゃんの反応は日によって違うが、読み聞かせをしている夫にとっては、胎動という形で示してくれる反応は何よりうれしく、さらに読み聞かせに力が入っていった。
そんなあるとき、少しお腹の張りが気になるので、病院で診てもらった際、「切迫早産」との診断を受け、しばらくの自宅安静を強いられることとなった。初めての出産で、つわりや貧血など、その時々でつらいことはあったが、今回のことは最もダメージが大きかった。仕事を続けていた私は、急遽仕事を休み、自宅で食事やトイレ以外は横になって過ごすこととなった。また、状況が少しでも悪化すれば入院しなければならないと言われており、毎日不安や心配に包まれながら、それらに負けないようにと過ごしていた。
精神的なダメージを受けていたその時期に、私を最も勇気付けてくれたのが、ベビちゃんと夫の絵本の時間だった。安静中も読み聞かせは続け、ベビちゃんは毎日、胎動を示してくれた。いつもは「動いているなあ」と何気なく感じる胎動も、この時は「ボクは元気だよ。今は大変だろうけど、ママがんばってね!」といっているように私には思えた。「元気な証拠」としての「胎動」、それがとてもうれしくて幸せな瞬間でもあった。
切迫早産の危機も落ち着き、少しずつ安静も緩和されていった現在、当初は「いつまで続くのかなあ」と思っていたこともあった読み聞かせが、今では絵本も12冊に増え、時間もゆうに20分はかかるまでになった。夫が読み聞かせを行う横で、私はその語りを聞いているといつしかα波がでるようになっていたのか、毎回安眠を覚えてしまう。そんな私を見て微笑みながら、読み聞かせを続ける夫。毎日、20分の家族3人の幸せな時間。こんなステキな「出会い」が既にあったのだと、ベビちゃんに伝える時が来ることが楽しみでたまらない。

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