大きい赤ちゃん、小さい赤ちゃん|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第9回】~ 赤ちゃんと笑顔 ~

入選

・大きい赤ちゃん、小さい赤ちゃん

静岡県  主婦  33歳

今年の春のこと。
次女を出産した私は長女の「赤ちゃん返り」に悩んでいた。
長女は4歳。この歳ではもう大丈夫だろうと軽く考えていたがあっさり長女は大きい赤ちゃんに変身し、おっぱいを飲みたがり、何をするにも大声で「ママ~、ママ~」と呼びつけ、抱っこを一日に何回もせがんだ。16キロを超える長女を抱っこすると出産したばかりの身体は悲鳴を上げ、次女の授乳で睡眠不足の頭はフラフラした。
しかも日に日に大きい赤ちゃんは小さな本物の赤ちゃんより手がかかるようになり今まで自分でできていた食事も着替えもトイレも一人ではしなくなった。だんだん私も疲れが重なり、ついつい怒ってしまうことが多くなった。次女の一ヶ月検診でも市で行われている新生児訪問でも長女の相談をした。「赤ちゃん返りってそれだけママと良い関係が作れているってことよ。」助産師さんはそう言ってくれたが毎日大きい赤ちゃんの世話の間に小さい赤ちゃんの世話をちょこちょことしているような感じで次女に対してうしろめたい気持ちになったりもしていた。
そんなある日。今にも雨が降り出しそうで次女を連れ保育園のお迎えをいつもより早めに行った。ちょうど先生に本を読んでもらっていた長女は私と次女の姿を見ると怒り出し「どうしてこんなに早く来るの!もう一回帰ってそれから来て!!」。
その言葉を聞くと何かが私の中でポキンと折れたような感じがした。雨が降りそうなのに。赤ちゃんはまだ二ヶ月なのに。ママだってがんばっているのに。そんな気持ちがどんどん湧き出してきて涙が一粒落ちた。
家に帰ると私は爆発した。「お天気が悪いから早くお迎えに行ったのにどうして一回帰れなんて意地悪を言うの!こんな小さい赤ちゃんも一緒なのにそんなこともわからないの!」。長女は泣きながら怒っていたが、謝るまで絶対に許さないと決めた私のそばから離れようとしない。こうなると女同士、意地の張り合い。長女もなかなか強情だ。お互い押し黙ったまま数十分が経った。そのとき・・・
「ママ、ゆりちゃんが笑ってる!」。私の背中越しにベビーベッドを見ていた長女が大声で言った。びっくりして後ろを振り返ると次女が輝くように笑っている。なんてかわいいんだろう。赤ちゃんの笑顔のパワーは本当にすごいと思う。おひさまのようにピカピカの笑顔は私と長女のささくれた気持ちを一瞬にして吹き飛ばした。長女が妹を名前で呼んだのもこの時が初めてでそのこともすごくうれしかった。
しばらく小さい赤ちゃんを眺めながら私は思い出していた。何もかもが不安だった長女の育児。初めて笑った顔を見た時「大丈夫、ちゃんとできてるよ」と言ってもらえたような気がして自信がついたんだった。きっと今回も大丈夫だ。
このときを境に私は落ち着いて大きい赤ちゃんに接することができるようになり、こうなったらとことん付き合おうと決めた。するとそんな私の気持ちに比例して長女も徐々に以前の落ち着きを取り戻し始め、妹をかわいがる様子もみられた。
それからひと月ほど経つと大きい赤ちゃんは完全に元気いっぱいな4歳児に戻り、小さい赤ちゃんは突然寝返りをして夫と私を驚かせた。子供は身体も心も成長が本当に早い。大人はとてもついていけない。なんだか寂しくて大きい赤ちゃんに「おっぱい飲む?」と聞いてみた。「ママのおっぱいなんかまずいからや~だよっ。ペッペッ!!」。あの日の小さい赤ちゃんに負けないくらいピカピカ輝く笑顔で長女が答え、そんな私たちのやりとりを次女がにこにこして見つめていた。またひとつ自信がついたと思った瞬間だった。
二人の赤ちゃん、パパとママのところに生まれてきてくれてありがとう。これからもずっとずっと笑って暮らそうね。

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