助産師に聞く 妊娠後期のQ&A|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

助産師に聞く 妊娠後期のQ&A

助産師に聞く 妊娠後期のQ&A
妊娠後期の悩み・不安

出産を間近に控えた妊娠後期は、からだだけでなく、心も不安定になりがちです。
ひとりで抱え込まずに、助産師さんに相談をして残り少ない貴重な妊娠期間を存分に楽しみましょう。

Q.

お産が急に進んだら…と考えると不安です。いざというときの対処法などを教えてください

回答者:助産師 大谷紗弥子さん大谷紗弥子さん
A.

これは経産婦さんに多い心配事かもしれませんが、初産婦さん、経産婦さん問わず、妊婦さん皆さんとそのご家族に気に留めておいていただきたい事です。

お産が急に進行するケースには、ある程度予測できる場合と、予測が難しい場合があります。
どちらの場合も、産婦さんは冷静な判断ができなかったり、手助けがなければ動けなくなってしまったりする可能性があります。ですから、相談・受診のタイミングや、いざという時の対処方法について、ご家族みなさんで知っておくことが大切です。
急なお産の進行が予測できる場合は、あらかじめ具体的な対処方法を、かかりつけの医師や助産師と相談をしておくと安心ですね。

◆妊娠中の経過で予測できる場合

◎子宮頸管無力症の既往
子宮の出口にあたる部分を子宮頸管といいます。子宮頸管は妊娠中には閉じておなかの赤ちゃんを支え、分娩時には開口して産道になります。
子宮頸管無力症とは、この子宮頸管部分が開きやすく、自覚のないままに子宮口が全開大してしまい、赤ちゃんを支えることができずに分娩に至ってしまう、という可能性のある状態をいいます。多くの場合は原因不明で、事前に診断して予防することは大変難しく、妊娠経過中に超音波検査や内診によって診断されます。
赤ちゃんが大きくなってくると、子宮頸管の部分にかかる負担も大きくなり、子宮の中で赤ちゃんを支えることができなくなります。そのため、本格的な陣痛がスタートすると、赤ちゃんが産道を通り抜けやすい状態になり、急速にお産が進行する可能性があります。

◎切迫早産の既往
妊娠22週~妊娠36週の時期に出血や破水、子宮の収縮が始まり、赤ちゃんが生まれそうになる状態を切迫早産といいます。安静にしたり、子宮収縮抑制剤という子宮の張りを押さえる薬を飲んだりしますが、入院して点滴治療が必要な場合もあります。
中でも、点滴で治療をしていた産婦さんは、早産の時期のたび重なる子宮の収縮によって、産道の一部である子宮頸管の長さが短くなっていたり、子宮口が開いていたりしています。つまり、早い時期から、お産の準備が進んでいるため、いざ本格的な陣痛がスタートすると、短時間で子宮口が全開大しやすく、急速にお産が進行する可能性があります。

このように子宮頸管無力症や切迫早産の既往があった妊婦さんは、妊娠37週未満でも出産に至るケースが多いのです。ですから、妊婦健診で現在の子宮口の状態や子宮頸管の長さ、赤ちゃんの推定体重、現在の妊娠週数などをきちんと把握しておきましょう。
そして、“出血”や“破水感”“定期的な子宮の収縮”“痛みを伴う子宮の収縮”を感じた場合は、早めにかかりつけの病院に相談をしましょう。
「妊娠後期に入ったら、いつお産がスタートしてもおかしくない!」という心構えを持って、早めに気持ちの準備もしておきましょう。

◆分娩が開始してから注意が必要な場合

◎早産期のお産のスタート
妊娠22週~妊娠36週の期間に出産に至る場合を早産と言います。
早産は、今回の妊娠経過中に切迫早産の既往がなくても起こり得ることです。急に破水をしたり、陣痛が始まったら、そのままお産に至ることもあります。妊娠37週未満の時期のお産では、赤ちゃんの体がまだ小さく産道を通り抜けやすいため、お産が早く進む可能性があります。

◎経産婦
前回のお産の進行が早かった場合や、上の子の出生時体重が今回の子の推定体重より大きいか同じくらいの場合は、産道が通り抜けやすい状態になっていることが多いのです。
「一人目の時に比べてまだ余裕…」と感じていても意外に子宮口が開いていることが多く、“本格的に陣痛が強くなり、いきみたくなってからから赤ちゃんが生まれるまでの時間があっという間”というのが経産婦さんに多い特徴です。

◎お母さんの体格に対して赤ちゃんの体格が小さい
お母さんが高身長や骨盤が広いといった体格であるのに対して、赤ちゃんの体が小さめの場合、赤ちゃんが産道を通り抜けやすく、本格的な陣痛がスタートしてから急速に進行する可能性があります。

◆相談・受診のタイミング

まだ我慢できる程度で余裕があったとしても、少し早めと感じるタイミングで病院に相談をしましょう。破水や、移動時の揺れなどの刺激で、急にお産に至る可能性があるためです。
また、前回のお産で急速な進行を経験した場合や、不安や恐怖が大きい場合、ご家庭の事情でいざという時にスムーズに病院に向かうことができない可能性が高い場合などは、あらかじめかかりつけ医に相談してみましょう。

◆「病院に間に合わなそう…」と判断した場合

どんどん陣痛が強くなり、“いきみが抑えられない”“おしりから何か出てきそう”“もう動けない”という感覚を産婦さん自身が感じた場合、まもなくお産に至る可能性が高い状況です。ご自宅にいる場合でも、車で移動中の場合でも、周りのご家族がこのような訴えを聞き、「もう病院には間に合わなそう」と感じた時点で、救急車を呼びましょう。このような場合、産婦さんは冷静に判断できなくなっている可能性があるので、周りのご家族の行動が大切になります。車で移動中の場合は、まずは、安全な場所に車を停めましょう。
そして、ご家族は救急隊の到着を待つ間に、いざお産になってもいいように準備をしましょう。かかりつけ病院に連絡をし、医師や助産師から指示を受けながら動くのもよいでしょう。

自宅にいる場合、産婦さんは動き回ったりせずに横になり、できるだけいきみを逃しながら過ごしましょう。
車で病院へ向う場合では、車の振動が刺激となり、お産の進行が促される可能性があるので、後部座席に横になって移動しましょう。破水や出血に備えて座席にはバスタオルを敷き、その他に数枚のバスタオルも準備して出発しましょう。

<お産の準備>

①お部屋や車内を寒くない環境にしましょう。
②温かいタオルを何枚か用意しましょう。
③赤ちゃんが生まれたら、出生時間を確認しましょう。
④赤ちゃんの顔色を見ましょう。ピンク色で元気よく泣いていればいいです。もし泣いていなかったり、顔色が紫色の場合は、タオルで背中をこすって刺激をして泣かせましょう。
⑤赤ちゃんの体の羊水を拭き取りましょう。
⑥赤ちゃんを温かいタオルで包みましょう。
⑦お母さんは横になり、赤ちゃんをお母さんの胸の上で抱っこしましょう。
赤ちゃんをお母さんより高く抱きかかえたり、極端に低い位置に寝かせないようにしましょう。
⑧可能であれば、赤ちゃんのお臍の部分にくっついているへその緒を、赤ちゃんのお臍から5センチくらい離れた所を1か所糸やひもで、きつく結びましょう。
⑨救急隊の到着を待ちましょう。

定期的に妊婦健診を受ける中で、ご自身の体調や赤ちゃんの健康状態、医師や助産師から受ける注意点やアドバイスはきちんと理解しておくことが大切ですね。母子健康手帳を活用し、常に身に着けておくようにしましょう。母子健康手帳は妊婦さんご自身だけではなく、周りに人たちにとっても、妊娠経過を知るための重要な情報源です。
また、いざという時に備えて入院に最低限必要な荷物の準備、病院までの交通手段の確認、上のお子さんがいらっしゃる場合は預け場所の手配などは、妊娠後期に入ったら、早めに準備しておくことをおススメします。

回答いただいた助産師さん

大谷紗弥子さん

聖母病院(東京都新宿区)勤務。
妊産婦さんやそのご家族が安心して新たな家族を迎えられるようにサポートをするかたわら、妊娠前の女性や妊婦さんへの食育やマタニティヨガを通して、女性のからだづくりにも携わっている。

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