助産師に聞く 妊娠後期のQ&A|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

助産師に聞く 妊娠後期のQ&A

助産師に聞く 妊娠後期のQ&A
妊娠後期の悩み・不安

出産を間近に控えた妊娠後期は、からだだけでなく、心も不安定になりがちです。
ひとりで抱え込まずに、助産師さんに相談をして残り少ない貴重な妊娠期間を存分に楽しみましょう。

Q.

妊娠中、温泉に入っても大丈夫?

回答者:助産師 大谷紗弥子さん大谷紗弥子さん
A.

つい最近まで、妊娠は温泉の「一般的禁忌症(温泉に入浴してはいけない症状)」のひとつに規定されており、妊婦さんが温泉に入ることは勧められていませんでした。しかし、これまでの研究結果を改めて見直したところ、温泉に入浴することや温泉の成分が、妊婦さんとおなかの赤ちゃんに悪影響を与える、という医学的な根拠がないことが明らかになりました。そこで、環境省は2014年の温泉法の改定において、「温泉の一般的禁忌症」から「妊娠中(とくに初期と末期)」という規定を撤廃したため、“妊婦さんは温泉に入ってもよい”ということになりました。

さらに、温泉に入浴することで精神的なリフレッシュ効果や、冷え症や腰背部痛、手足のむくみなどといった妊娠中のマイナートラブルの軽減にも有効であることが期待されています。

とは言っても、妊婦さんは体調が変わりやすかったり、大きなおなかでバランスを崩して転倒しやすかったり、転倒によっておなかを強打してしまうリスクがあったり、ということも事実ですから、体調と安全に十分に配慮しながら入浴する必要があります。
妊婦さんが温泉を楽しむための、いくつかのポイントをあげておきます。

<皮膚への刺激が強い成分の温泉は控えましょう>

温泉の泉質について、基本的には妊娠中に入ってはいけない泉質はありません。しかし、妊娠中はホルモンの影響で皮膚がデリケートになっており、妊娠性の皮膚炎でかゆみや湿疹が出やすい体質になる妊婦さんも多いため、刺激の強い硫黄泉や、濃い食塩泉、ラジウム泉は避けたほうが無難です。刺激の少ない単純泉がおススメです。

<極端に高温や低温の温泉に入るのはやめましょう>

42度以上の高温や30度以下の低温は、交感神経が刺激され血圧が上昇するため、できるだけ避けましょう。38~40度程度が体への負担が少なく、医学的にも入浴に適した温度と言われています。
ただ、人によって心地よいと感じる温度は大幅に異なりますし、施設によってお湯の温度が表示されていない場合もあるので、普段、入浴している温度より少し熱く感じる場合は、全身浴の時間を短くし、半身浴や足浴にすることをおススメします。水風呂への入浴は避けましょう。

<入浴時間は長くても10分以内、入浴回数は一日1~2回にしましょう>

妊婦さんに関わらず、入浴時間や回数が多かった場合、湯疲れをしてしまう可能性があります。適切な入浴時間は、はじめのうちは5分程度とし、慣れてきても10分以内といわれています。また、入浴回数は一日あたり1~2回としましょう。
湯疲れの症状は全身疲労感や倦怠感、気分不快や頭痛などです。その他、妊婦さんの場合は、おなかの張りや出血をしてしまう可能性もあります。このような症状を感じた場合は入浴を中止し、横になってゆっくり休むようにしましょう。ゆっくり休んでいても症状が悪化するような場合や、おなかの張りや出血がなかなか収まらない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。

<のぼせ・立ちくらみに注意しましょう>

妊娠中は、のぼせやすい体質になっています。また、急に立ち上がったり、普段から立ちくらみを起こしやすい場合、貧血がある場合などには、浴槽から上がる際に立ちくらみを起こしてしまうことがあります。ですから、普段より入浴時間は短めにし、のぼせる前にあがるように注意しましょう。
また、浴槽から上がるときは、全身浴から一気に上がるのではなく、全身浴→半身浴→足浴というように段階を踏んで上がるように工夫したり、いざ、のぼせや立ちくらみを起こした場合はそのまま動き続けるのではなく、一旦、浴槽の外に座り込んだり、横になるなどして休憩し、回復してから動き始めましょう。
もし、のぼせた場合は、水分補給や冷たいタオルを額や首の後ろに当てて対処しましょう。

<転倒には十分に注意しましょう>

大浴場や露天風呂では床が濡れているだけではなく、温泉の成分でぬるぬるしているところがあったり、ゴツゴツした石造りの風呂であったりして、足元が不安定になりがちです。また、お湯の色で浴槽の中が見えにくく、段差に気が付かずに転倒してしまう危険性も高くなります。
特に、妊婦さんは大きなおなかで足元が見えにくく、バランスを崩しやすいため、とっさの行動が取りにくい状態です。足元には細心の注意を払い、手すりや壁を支えに移動するようにしましょう。また、湯船に入る際は、浴槽の縁に一度腰を下ろしたり、しゃがんだ状態から浴槽に入り始めるとより安全です。

<一人ではなく、付き添いの方と一緒に入りましょう>

入浴中の急な体調の変化や転倒の危険性があるため、必ず大人の付き添いの方と一緒に入浴するようにしましょう。ご夫婦で貸切風呂や、露天風呂付客室のある宿を利用してもよいでしょう。

<必ず、母子健康手帳を持参しましょう>

万が一、体調不良や転倒などで、医療機関への受診が必要になった場合に備えて、保険証は必ず持参しましょう。また、これまでの妊娠経過がわかるように「母子健康手帳」と「妊娠中に行った検査結果のコピー」も保険証といっしょに『3点セット』として、必ず持ち歩きましょう。母子健康手帳はわかりやすいところに持っておくようにし、一緒に行くご家族やお友達にも、持っていることを事前に伝えておくとよいでしょう。

<温泉旅行は、日帰りできるエリアにしましょう>

妊娠中は、体調さえ悪くなければ外出や旅行に制限はありませんが、“体調のトラブルが起きた時”のことを必ず考えて計画しましょう。もし、外出先でおなかの張りや出血、転倒などのトラブルが起きた時は、外出・旅行を中断して医療機関への相談・受診をしましょう。
ただ、妊婦さんの場合、かかりつけ病院以外ではなかなか受け入れてもらえないのが現状です。また、温泉地の多くは郊外であったり医療機関が充実していない地域であったりする可能性もあります。
ですから、温泉旅行だけに限りませんが、いざという時にかかりつけの産婦人科に受診することができる、日帰りエリアへのお出かけをおススメします。

》妊娠初期Q2.妊娠初期でも、旅行へ行っていいでしょうか?

妊娠中は、不安定な体調の変化や生活の変化、ホルモンバランスの変化からストレスを感じやすい状態です。また、妊娠の経過に伴って身体的なマイナートラブルも多くなってきますから、気分転換やリラックスができる時間はとても大切になります。
温泉は多くの日本人にとって欠かすことのできない文化です。妊娠中でも体調さえ良ければ楽しめますから、安全に配慮して上手に活用できるといいですね。

回答いただいた助産師さん

大谷紗弥子さん

聖母病院(東京都新宿区)勤務。
妊産婦さんやそのご家族が安心して新たな家族を迎えられるようにサポートをするかたわら、妊娠前の女性や妊婦さんへの食育やマタニティヨガを通して、女性のからだづくりにも携わっている。

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