持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第10回】
~ 赤ちゃんとの記念日 ~

入選

問題なし!(7/4)の日

その他  パート  29歳

忘れられない記念日、それは7月4日カジーが生まれた日。
ニュージーランドの主人と結婚して数ヶ月,楽しい事もあるが、文化の違いに戸惑う事もあった。彼の家は大家族。絆がとても強く、何をするにも一緒。家族のイベントが定期的にあり、やるとなると、とにかく大きく毎回お祭り騒ぎ。私といえば、戸惑いつつも何とか早く家族の一員にならなければと必死になっていた。
そんなある日、義理のお姉さんから「家族の女性軍一同で私の出産に立ち会う予定だからあなたもどう?」とお茶でも誘われるような感じで誘われたので「OK」なんて深くも考えずに答えてしまった。(どうやらこれも恒例の家族のイベントらしい。)その後が大変、「主人なしで彼の家族と過ごした事など一度もなく、ましてや出産という一大イベントに立ち会うなんて…。」悩み悩んで月日が流れた。5月の末、家族でお姉さん夫婦の結婚記念日を祝う事になり、この時参加できない事を伝えようと考えていた。だが家族は今まで以上にお祭り騒ぎ。生まれてくる赤ちゃんの事で皆がワクワクしていた。結局断れずに帰って来てしまい、こうなったら腹をくくって女性軍一同に加わるしかないと決心し、その日を待つ事にした。それから5週間後、夜中3時電話の音で目が覚め、車で病院に駆けつけた。
大人数という事で分娩室に入るまで家族は待合室で待たされた。緊張感いっぱいで無口の私にとってかわり、家族はいつものようにワイワイお祭り騒ぎ。待つ事一時間、義理のお姉さん、彼女の旦那さん、女性軍の計8名と大人数で分娩室に通された。だが、すぐに始まるわけでもなく、またもやワイワイ皆で話している。当の本人も陣痛の波がくる度痛がるが、一緒に家族の話に交ざり、とてもリラックスしている様子。いよいよ痛みが強くなると、女性軍一同立ち上がり、彼女の足、腰、腕とさすり、汗を拭き、声をかけ励ましている。助産婦さんもこの共同作業に驚き入っている様子。分娩室に入り一時間半が過ぎた頃皆の声援と叫び声の中カジーが誕生した。きっと彼も早くこの大家族の一員になりたかったに違いない、超スビード安産だった。その後もお姉さんをシャワーに入れ、ベットをきれいにし、カジーにオムツをあてと女性軍は大活躍だった。しかし、私はというとあまりの驚きで頭は真っ白、無口のまま一歩下がった所で見ている状態。そんな時お姉さんから、「カジーに服を着せてあげて。」と頼まれた。人生初めて着る服を私が着せるなんて…と一瞬戸惑ったが、なにかやってあげたいという気持ちも心の底にあったため、なれない手つきで着せてあげた。服を着せられたカジーはお祭り騒ぎの中すやすやと眠っている。それを見て、私もようやく家族の一員になれたかなという気持ちになり、その後は女性軍に加わりてきぱきと手伝う事ができた。
一段落し、お姉さんとカジーを休ませるため私達は一度家に帰ることになった。いつもは思う事をなかなかうまく言葉で表現できず、家族の中にいると固まってしまう私だが、この一大イベントを終えて帰る時には、お姉さんに「こんな素晴らしいイベントに誘ってくれてありがとう。」と心から素直に伝える事ができた。もちろんカジーにも「この服着せたの私だよ。覚えていてね。」と伝えた。
あれから3年経ち、私はすっかり大家族の一員になり、毎回のイベントを楽しみにしている。あのカジーも「アンティ、アンティ」と人見知りせずなついてくれている。だから私は、7月4日カジーが生まれた日で、文化が違っても問題ないと気付いた日を、問題なし(7/4)の日と心に刻んでいる。
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