持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第10回】
~ 赤ちゃんとの記念日 ~

入選

初めて記念日

島根県  専門職  28歳

私は保育士をしている。
保育士1年目に私は0歳乳児クラスの担任となった。
仕事は大変だったけれど、可愛い赤ちゃん達と過ごす毎日は楽しくてしょうがなかった。
そんな私も、今の主人と出会い、保育士2年目の時に結婚した。小さい頃からの夢だった保育士を辞めたくはなかったので、結婚退職は考えず、子どもが出来ても、仕事と家庭を両立していくと決めていた。そして私は結婚後すぐに妊娠し、産休、育休に入ることになった。私の職場では、育児休暇を1年取った前例がなく、私も色々悩んだ末、7カ月で職場復帰することにした。
産んだ我が子は誰よりも、何よりも可愛くて、朝から晩まで一日中一緒にいる事が幸せでたまらなかった。職場復帰が近づくにつれ、離れたくなくて、毎日涙したのを覚えている。
7カ月の娘を近くの保育所に預け、私は職場復帰した。私が受け持つことになったクラスは、その時の娘と同じ、0歳の乳児クラスだった。
この時期の赤ちゃんの発育・発達は著しい。朝早くから夕方遅くまで保育所で過ごす赤ちゃんは、保育所で色々な初めての姿を見せてくれる。そんな赤ちゃんたちの成長を温かく見守る保育士の私。でも私の心の中は、様々な複雑な思いでいっぱいだった。
「他人の赤ちゃんの成長は1日中見られて、なんで自分の愛しい娘の成長は近くでずっと見てあげられないのか…」って。私は葛藤した。娘を保育所に預け、保育士として働いている自分が嫌になったのだ。保育士になって初めてこの職業に就いたことを後悔した。この仕事をしているから余計に苦しくなるのだと。
家に帰って娘の保育所からの連絡帳を読み、「初めて○○をして見せてくれました。」など、先生からのコメントが書いてあると、娘の「初めて」は自分のこの目で見たかった、「初めて」を一緒に喜び合いたかったと思い、涙が止まらなかった。
そんな私を見ていて、主人が言った。
「僕達の前で見せてくれたその時のその姿が、初めてだよ。だからその日が「初めて記念日」だよ。」って。
主人のその言葉で、私の中に重くのしかかっていた思いが、一気に軽くなった。主人も私と同じように思ってくれていた事が分かり、嬉しかった。
その日から、私達夫婦が一緒に成長を見て喜びを感じた日、初めて出来た日を、「初めて記念日」にした。
主人も私も仕事をしている限り、子どもと一緒に過ごす時間が限られてくる。葛藤もあるだろう。でも、だからこそ、一緒に過ごす1分、1秒のこの時間を大切にしていこうと、夫婦で思いをひとつにした。
この日、娘の「初めて歩いた記念日」は私達夫婦の「初めて子育ての思いをひとつにした記念日」となった。

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