持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第14回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

満点の笑顔

神奈川県  主婦  女性  62歳

私が、赤ちゃんで思い出すのは、決してほのぼのとした内容では無いのですが、40年たっても、忘れられない事だったので。
40年前の春、4月に結婚式を控えた3月頃、まぶたに違和感を感じ近くの大学病院の眼科に出向いた時の話です。
待合室で、結婚間近でうかれてたのか、いずれ私もこのような姿になるのだろうと思われる、若い親子のそばに座りました。
その赤ちゃんを抱くママは、本当に美しい人で、上品な姿に、色々な意味でのゆとりを感じさせる方でした。
赤ちゃんにたえず話しかけ、その赤ちゃんもキャ、キャ、とかわいい声をあげてました。男の子のようでした。
「かわいいですねぇ~」と、簡単に声をかけてしまった時、
「良かったネェ~、お姉ちゃんが、かわいいだってえ~」…と、その子を、私の居る方へ向けてくれました。
「わあ~」って言うと同時に、気のきいた言葉を用意していたはずなのに、その子の顔を見たとたん、言葉を失ってしまいました。
思ったとおりの整った顔、でもその瞳は、両目共、真白だったんです。
百点満点の笑顔で、焦点は合って無くても、私に向けて笑ってくれてる……
そのとたん、涙がポロポロ…と出てきてしまい、頭の中では、「この子は、大丈夫なのか、将来は、どうなっちゃうんだろう…こんな恵まれていそうな親子なのに、神様は試練を与えるんだなぁ…」とか、心配で、いっぱいになっちゃいました。
と言うのも、以前、なにかの記事で。わが子の目が、暗闇で光る…と、後にガンと分かり、両目摘出することになってしまいました…って話を知っていたから。
とまどっている私の気持ちをさっしてか、そのママは、
「大丈夫ですよ、治るから、そのために頑張るんだものねぇ~」って、あやしながら、その子に言ってました。
大人でも怖いのに、この小さな子に、どんな治療が待ってるんだろうと思うと、又涙が出そうでした。グッとこらえて、やっと、
「ママに抱っこされて、ごきげんでちゅねぇ~」…と言うのが、精一杯でした。
そして、気安く声をかけ、あわれむような失礼な涙を流してしまった自分を、とっても恥ずかしくなり、その場に居るのがつらくなりました。席を移ろうか、いやっ失礼かも、とか、どうしようと思っていると、呼ばれたのか、私に会釈すると、診察室に入って行きました。自分の子でも無いのに、よろしくお願いしますと、自分の失礼に、深々と頭を下げました。
そしてすぐ、あの子の声が待合室中に聞こえました。
その後、お会いする事はありませんでしたが、私と話した時の、大丈夫!と言いながらの淋しそうな顔、でも、私が守ると言わんばかりの不思議な表情、その立場に立った人の顔なのかも知れません。
怖くて病名など聞けませんでした。白内障なら、今の時代、皆、手術してますが、40年も前の事、技術は小さな子にはどうだったんだろう、それとも、もっと怖い病気だったのかしら…と、今でも時々思い出します。元気にいてくれたら40才、とっても今言うイケメンになっていると思います。
そして、何より思うのは、あのママなら、きっと守りきってくれてると信じます。

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