持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第14回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

一軒で二人

茨城県  主婦  女性  60歳

夕食の後片付けをしていると、電話が鳴った。急いで取ると、東京にいる次女からだった。「あ、お母さん、おめでたですよ、第二子、予定日は四月下旬だよ」と嬉しく、弾んだ声。「里帰り出産するのでよろしく」と付け加えた。
久々の朗報に、私の心も明るくなり声も弾んでいた。朗報をそばにいた夫に告げると、「あ、そう」と一言。男の人は素っ気無い。もっと喜べば良いのにと、思ったが言葉を飲んだ。
その夜は、嬉しくて心が興奮したが、快い眠りに着くことが出来た。
その朗報から数日後の夜、県内に住む長女からの電話が鳴った。「出来ました、第二子、予定日は五月上旬だよ、里帰り出産をしますんで、よろしくね」と、はっきりした口調で知らせて来た。
私は、頭が混乱していた。数日前に同様な報告を受けた。予定日も近い、こんなことって、本当にあるの。
長女と次女は、第一子を三年前に二日違いで、里帰り出産している。
また、同時出産か、こんな不思議なことが二回もあるの。偶然としか答えが見つからず、心はモヤモヤを残したままだった。
それから数ヶ月たって、娘達二人は、大きなおなかを抱え、三歳の子供をそれぞれ連れて我が家へやって来た。
普段は、夫と三女の、静寂な三人暮らし。
それが、相方の男と女の三歳児の登場により、場面は戦場へと急展開していった。小さな部屋は、衣類とおもちゃで占領され、足の踏み場もない、以前の静けさと空間はなくなってしまった。
家の中だけで遊ぶのは飽きてしまい、近くの公園へ連れ出すのだが、活発な三歳児を追うのは、日頃運動不足を感じていた我が身には、相当な激務となって、一ヶ月が過ぎた。
そして、予定日近くになったある早朝、次女が、「おなかが張って来て、痛い」と言うので、夫の運転で病院へ急行。その後、次女の夫に連絡し来てもらった。
翌日の早朝、一日掛かりで無事男の子を出産した。四日間入院して、自宅へ戻って来ようとした時に、長女が、おなかが痛くなり即入院。当日男の子を出産した。
四日違いで誕生した新生児を、一軒の家で二人も見られるという、稀で貴重な体験をすることになった。
娘達は、「姉妹で同時出産、それが一回じゃなくて、二回も続くなんて、お母さんは、世界一幸せなんじゃない」なんて、叱咤激励を受け、新生児二人、三歳児二人の世話をすることになった。
第一子出産の時は、私がまだ仕事をしていたので、思うように世話してやれなかった思いもあり、今度は退職したので、四人の面倒を見る決意をしたのだった。
新生児の一番の大仕事はお風呂に入れることだ。娘達はそれぞれ病院で研修を受けたらしく、新しく購入したビニールの小さな風呂で五分以内で、頭と体全体を洗い私に渡し、おむつを替え衣類を着させた。
その後私は、三歳児二人を大きなお風呂に入れるのも大仕事、思うように進まない時間だけが過ぎて行った。その後の二人は、仕事から帰って来た三女に、全てを委ねた。
そんな雑然とした日々を過ごしていたある日、二十日たった次女の子が高熱を出した。
出産した病院へ連絡すると、三十八度以上の高熱は予断を許さないと言うので、即入院。一日経って熱が下がったので迎えに来てくださいとの連絡を受けた時は、家族全員で手を合わせ、神様に感謝した。
二人の新生児を二回も同時に面倒見られたこと、私の四人の子供出産時以来の、貴重な体験だった。この幸運な出来事に感謝し、四人の孫達の健やかな成長を祈り続ける日々は、続いている。

ページの先頭へ

電話をかけて相談・問い合わせる

お問い合わせ 0120-01-5050
(9:00~17:40 土、日、祝日、会社休日を除く)

PCサイトを表示する