持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第2回】
~ 赤ちゃんが教えてくれた喜び ~

佳作

「十三才で兄になった長男」

【一般部門】 山川 昌子 滋賀県  主婦  36歳

私には、十六才の長女、十三才の長男、0才の次男の三人の子供がいる。0才の次男は、今年の六月に生まれたばかりで、私にとって、赤ちゃんを一から育てるのは、まさに十三年ぶりとなった。上の二人の子供達は、赤ちゃんが出来た事を何度言っても、なかなか信じず、「うっそー、絶対うそ!」と言うばかりで、結局信じてくれるまでに、一ヶ月近い日がかかったのだが、本当の事と認めた時は、二人共大喜びだった。
その後、おなかが目立ち始めた頃から、十三才の長男の優しさが、今まで以上のものとなっていった。長女も長男も、優しい子に育ってくれたとは思っていたが、特に今、大反抗期の長女に比べると、口調も優しい長男は、私の体、しいては、おなかの赤ちゃんへのいたわり、思いやりが、想像を超えたものになっていった。育児雑誌を読み、妊婦の色々な事を把握した長男は、棚の上の方の物を取ろうかと考え、見ているだけで、「取ったらあかんで、僕がとるし。」と後ろから声がする。大きなおなかで、下の物がとりにくくなった頃、私が家事をしていて、何か落とすと、素早く拾いに来てくれる。お風呂で、毎日おなかに向かって、どんぐりコロコロを歌う事にしていた私が歌っていると、風呂場へ来て、一緒に歌うだけでなく、手で劇をするように、どんぐりコロコロを演じてくれるのだ。「楽しみ?」と聞くと、長男は、「うん!」とうなづいていた。その笑顔が、私も微笑ましかった。もちろん、中学生らしい反抗をする事も、しばしあるのだが。
そして、次男が誕生した。それから私は、この十三才の長男の次男に対する接し方、愛情に驚かされる事になる。生まれた日、所属している野球のボーイズリーグの練習のため、家族の中で、最後に誕生を知った長男は、「しんどかった?よく頑張りました。」と言ってくれ、学校に、部活に、ボーイズリーグにと、忙しい毎日の中、少しでも時間があれば、病院へ赤ちゃんを見に寄る日々。退院して、毎日が過ぎていくうちに、母である私と同様程、すっかり扱いに慣れ、いつの間にか家族の誰よりも、だっこが上手くなっていた。
次男の誕生から一ヶ月少しで、学校は、夏休みに入った。それから長男は、弟の世話をどんどんこなせるようになっていった。子守歌を歌いながら、だっこして寝かしつけるようになった。部活やボーイズ以外で家に居る時は、夏休み中本当に長男に助けられた。長男が次男の世話をしてくれている間、私はいつも家の中を走り回って家事をしていた。その合い間に二人をのぞくと、長男が次男のほっぺに何度もチュッとしているのだ。私は思わず目を細め、長男に見つからないように、二人を一時見つめていた。とても暖かく、幸せな気持ちになった。
ある日の事、次男のお風呂は長女か長男が次男を裸にしてつれてきて、私が入れたあと、又上げてくれるのだが、私が入れない日、長男に入れてほしいと頼んだら、心よく引き受けてくれた。先に入っている長男に次男を渡し、「いいなあ、お兄ちゃんと一緒で、気持ちいいなあ。」と次男に話しかけ、ふと長男を見ると、顔から肩まで汗の玉だらけだ。しかもその顔は真剣そのもの。お風呂が終ってから、「ありがとう、助かったわ。」とだけ声をかけたのだが、次男を湯舟で落さないように必死の長男の顔と汗の玉を見た時、私は、長男に感謝の気持ちといとおしさで、涙が出そうだった。先日、寝かしつけたばかりの次男を長男にまかせ、洗い物をしていた時、震度四の地震があった。すぐ様子を見に行くと、長男は次男の上で、四つん這いになって、壁になってくれていた。又、兄弟二人の時、そうっとのぞくと、便秘がちの次男のおなかをさすっている姿も見た。世間には、確かにこれだけ年の離れた兄弟もいるだろうが、今まで下の子として育ってきた長男が、こんなに頼りある、たのもしいお兄ちゃんになるとは想像もしなかった事だ。これからも弟に優しいお兄ちゃんであるだろう長男の話を、次男が大きくなったらしてあげようと思っている。次男の誕生によって、これまで以上の長男の優しさと、兄となった逞しさを、私は誇りに思っている。これからも、兄弟二人の時の様子をのぞき見するのが楽しみだ。
高校生の長女、中学生の長男、赤ちゃんの次男の世話、子育てに忙しい毎日だが、長女と長男が私を助けてくれるから、楽しく元気に過ごしていける。私は、上の子二人に、心から感謝している。

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