持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第7回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

大賞

こころがわり

144票 宮田 崇 山梨県  会社員  31歳

子どもがきらいであった。
だから、子どもと接することを避けてきた。
そんな私も結婚して、妻から妊娠したことを知らされた。しかし、実感がわかなかった。
妻に「赤ちゃんできてうれしい?」とか「赤ちゃんに関心ある?」とか聞かれたが、返事ができなかった。嬉しくないわけでもないし、赤ちゃんに関心がないわけでもない。ただ、実感がわかなかったのだ。
そんな私の態度に不満と不信感をつのらせる妻は「少しは育児書を読んで、勉強してよ」と言って怒った。しかし、私は読まなかった。
妻が着々と出産と育児の準備を進めるなか、私は何もしなかった。
出産日、人生何回も経験できることではないからと、出産に立ち会った。
こんなとき、男ほど使えないものはない。
陣痛で痛そうな妻の腰をさすると、「そこじゃない、もういい」と怒鳴られる。
妻の気をまぎらわそうと話しかけると「うるさいから、黙って」と怒鳴られる。
できることといえば、妻に「水」と言われ、「あ、はい」と水を差し出す。
妻に「汗」と言われ、タオルで妻の額をぬぐう。この程度である。
こんな使えない男は無視され、出産はクライマックスをむかえた。
妻の「う~ん」と痛みに耐えながらのうなり声。
先生の「もう少し頑張ろう。赤ちゃんが見えてるよ」のかけ声。
助産師さんの「赤ちゃんも頑張ってるよ」の励まし。
女の人ってすげ~な、と傍観している私。
そして、赤ちゃんが生まれた。
さっそく先生が「お父さん、抱っこしてみな」と赤ちゃんをさしだした。
分娩台にいる妻よりも先に、赤ちゃんを抱いてみた。
抱いた赤ちゃんの顔をよく見ると、奥二重の目やつぶれた鼻。まさに私のミニチュアであった。
赤ちゃんが笑ってるような気がしたので、妻に言うと、「天使のほほえみ、っていうんだって」と教えてくれた。
赤ちゃんは生まれてから15分ぐらいは記憶が鮮明だという。赤ちゃんの顔を見つめて、「はじめまして。お父さんだよ。よろしく」と恥ずかしいので小さな声で挨拶をした。
赤ちゃんを初めて抱いたこの瞬間が、私にとって子どもができたことを初めて実感した瞬間であり、私と息子の出会いであった。
この出会いからもうすぐ1年になる。
友人や職場の同僚に、携帯のカメラで撮影した子どもの写真を見せながら、自慢話をする。そのうえ、子どもの抱き方などのうんちくを語る。今や周りからは親バカだと思われている。
子どもを連れて散歩に行くことといっしょにお風呂に入ることが楽しい。
抱っこひもをして町中を30分ぐらい散歩する。抱っこひもをして歩くことが恥ずかしいと思わない。
お風呂では、子どもの体を洗うのが一苦労だが、1日で一番楽しい時間だ。子どももお風呂が好きだ。妻の父とはどちらが子どもをお風呂に入れるかで、心理戦を繰り広げている。
今では、おむつも替える。近頃、じっとしていないので、前よりもおむつを替えるのが難しくなった。
もちろん、育児書も読む。本屋に行って、女性の中に混じって、立ち読みだってする。
女性は妊娠して、日々お腹が大きくなり、生活が不自由になる。出産時には、男性には想像できない苦痛をともなう。だから、女性は、体内に生命が宿った瞬間から子どもができたことを実感するのだろう。
妻には申し訳ないが、私が子どもができたことを実感したのは、子どもを初めて抱いたときであった。そして、このとき、自分が変わり始めたときであると思う。
私は子どもが好きになった。子どもと遊んだり、子どもの世話をするのが楽しい。子どもができて自分の時間はなくなったが、幸せを感じる時間がふえた。幸せを感じる時間をふやしてくれた子どもとの出会い、そして、出会いを与えてくれた妻に感謝している。

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