持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第7回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

特別賞

プレゼント

曽我部 明子 愛知県  パート  58歳

二人目の孫が生まれる前、嫁から家事手伝いの要請があった。
一人目は実家で養生したのだけれど、二人目は自宅マンションに帰るので、応援をたのみたいと言う。
どれほどの役に立つのか自信はないけれど、たのまれればやってみるしかない。
二人目も女の子で無事出産を終え、嫁と孫は、我が家であるマンションに帰ってきた。
危険防止も兼ねて用意されたベビーベッドに、鈴乃と名付けられた赤ん坊が、ちょこんと寝かされる。
赤ん坊の世話は嫁まかせなので、私は見ているだけ。
嫁は、おむつ替え、授乳を、なんなくこなす。
ことに感心したのは沐浴である。マンションの洗面台は広く作られてあるので、水槽をきれいに洗い、その中に湯を張り、助産師さながら、体を支え回しながら沐浴させるのである。
赤ん坊に話しかけながら、手際よくすすぎあげると、唯一、私の出番。バスタオルに受け取り、新しい衣類の横でふき残しのないよう、ていねいにふいてゆく。
そこへ嫁が来て、へその緒の手当ての後、おむつ、衣類を着せて一件落着。
心地良さそうに手足を動かす赤ん坊。
初めての姑と嫁の連係プレイに満足してくれたかな、と内心嬉しくなった。
さて、家事を引き受けた私だが、洗濯機に始まり、炊飯器、風呂、洗面所、我が家にはない電化生活。使用方法にとまどうことしきりで、頭の混乱を整理しつつ取り組むこととなった。それでも主婦歴三十数年。姑の家事は、慣れるとすこぶる段取りがいい。
そこで必然的に生まれる時間の余裕。
嫁に養生をすすめても、赤ん坊に手がかかるので、寝てばかりもいられない。
生まれたての孫の目は、まるでアーモンドみたいにパッチリ。見つめるとなぜか心が安らぐ。豊かに張った嫁の乳房からあふれる母乳の甘い匂いが、又心をいやしてくれる。そして「お姑さん、はい」嫁は、好きなだけ赤ん坊を抱かせてくれるのだ。
粘土で取った小さな足型は、この子のいい記念になることだろう。
やがて上の孫を遊ばせながら、嫁との雑談が始まる。他愛のない話なのに、次々と話題がつながる嬉しさ。女の子のいない私にとって、嫁とこのように至近距離で語り合えるなんて夢想だにしなかったことなのだ。
上の孫との入浴は、久しぶりに、くつろげない入浴のある事を思い出させてくれる。
日課の買い物は、上の孫には、外気浴を兼ねたいい気分転換だ。
嫁と三人の食事、そして息子を囲んでの夕食も、久しくなかった賑やかさである。
授乳、おむつ替えがくり返される赤ん坊は、その都度、自己主張の泣き声を張り上げてアピールを怠らない。
こうして過ぎた一週間。わたしは電車の旅人として岐路についた。
一抹の寂しさを胸に、夜、荷物の入ったカバンを開けた。するとなんと言う事だろう。あの乳の匂いが鼻腔をくすぐるではないか。しょっちゅう抱いていたものだから、赤ん坊の乳の匂いが、私の衣類に移り香として残ったらしい。洗濯もしていたのに、これはまさしく赤ん坊からのプレゼントにほかならない。
幸せな一週間の上に、こんな思いがけないプレゼントがかくれているなんて。私は自分の衣類を抱きしめ、至福の一時を感謝せずにはいられなかった。

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