持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第7回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

最高のお誕生会

福岡県  自営業専従者  34歳

「あなたのお誕生日は、12月13日ですよ~。」私と夫と息子は、お腹の赤ちゃんに毎日話しかけていました。本当の予定日は12月23日。ですが、今回の妊娠は体に負担がかかったようで、お腹が張りやすく赤ちゃんも早い時期から下がってきていました。息子の陸の誕生日は12月13日。どうせなら一緒の誕生日が嬉しいねと、家族みんなで12月13日を目標の出産予定日に決めました。そして毎日お腹に、「まだだよ~。もうちょっと待っててね~。」と話しかけるようになりました。
陸の5歳の誕生日には、イチゴのケーキを焼こうと前から約束していたのですが、13日に陣痛が来たらお誕生会は吹き飛んでしまいます。急遽11日の日曜日に、おじいちゃんおばあちゃん達を交えての、早めのお誕生会を開くことになりました。
前日の土曜日の夜、大きなお腹で卵白を泡立て、シフォンケーキを焼きました。これで、明日イチゴを飾れば大丈夫。安心してお風呂に入ったその直後、脱衣所で倒れてしまったのです。
「あぁ、このまま産んでしまったら、お誕生会を開いてあげられない…。」と私が思った瞬間、お腹の中が「ぽこぽこっ!ぽこぽこぽこ!」とまるで花が咲いたようにはしゃぎました。赤ちゃんが元気に動いている間は産まれませんと本に書いてあった気がして、「まだ、大丈夫かな?」と家族には告げました。でもやっぱり、陣痛はやって来たのです。
夜中の3時、甘えん坊で泣き虫の陸をおいて病院に行くのが不安な私。陣痛の間隔を計りながら、一人で夜明けを待つ私。いよいよ間隔が短くなってきた時、夫を起こし着替えを手伝ってもらいました。すぐ側で寝ている陸に、「赤ちゃんが産まれそう!起きて!」と声を掛けます。「え!」とビックリして飛び起きた陸に、「おばあちゃんにも教えてあげて!」と手伝いに来てくれた夫の母に知らせるよう頼みました。
「電話と赤ちゃんノートを取ってきて!」、「おばあちゃんにオニギリを作ってとお願いして!」、「お茶の準備もお願いしてね!」と、私から。
「おばあちゃんがオニギリは何味がいいの?ってよ!」、「お茶を入れる水筒はどこにあるの?ってよ!」と、陸から。
早朝の突然の出来事に面食らっている大人を横に、息子は動けない私の為の優秀なメッセンジャーボーイとなっていました。あんなに泣き虫で、甘えん坊だったのに…。そして、家族の愛がこもったお茶とオニギリを陣痛の合間に食べながら、息子を残し、私は家を後にしたのです。安心して、夫と2人で。
病院到着と同時に分娩台へ。児頭回旋異常やへその緒が絡まったりと、少々手間取りましたが、12月11日午前9時37分、娘の「毬(てまり)」が生まれたのです。通常より胎脂だらけで、お世辞にもかわいいとは言えない産まれたばかりの妹に、陸は会うなり「かわいい!」と感激して、毬の名前をずっと呼んでいました。今思うと、陣痛が来る直前の毬の胎動─あれは、まるで小花模様の花手毬のように弾んだ彼女からの「私、今から産まれるからね!」との、メッセージだったように思えます。毬は、お兄ちゃんのお誕生会に向けて、どうしても存在したかったのでしょうね。
12月13日、ついに陸の誕生日。思いがけず病室にて、おばあちゃんに手伝ってもらってパパが泡立てた生クリームを、私が焼いたシフォンケーキにデコレーションします。もちろん、イチゴは陸がのせました。私の両親と夫の妹も病室に駆けつけてくれました。病院のスタッフにまで祝福されたお誕生会。傍らには兄を祝いたくて、生まれてきた妹。集まったみんなに、「お兄ちゃんおめでとう!」と祝ってもらった陸。何とも言えない凛とした横顔でした。とっても素敵な、最高の、陸の5歳のお誕生会。

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