持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第8回】
~ 赤ちゃんとわたし ~

入選

「793、運命の3日間」

三重県  主婦  23歳

「少し小さめですね。」
その2日後に命が誕生した。あの日、先生は思いやりを持って私に言葉がけをしてくれたのだろう。
私は今までにたくさんの素敵な出会いを繰り返してきた。神様が私に与えてくれた一番の能力【いい人が近づいてきてくれる力】私が生まれて一番に出会った両親から始まり、姉妹、主人、友人、お世話になったたくさんの先生、職場の先輩。人間関係に恵まれた環境で育った。
そして出会った私の赤ちゃん。出会いは、全身麻酔で昏睡状態だったあの日。何の記憶も残っていない。ただ気の小さな私には、とうてい考えることのできない自信と安心感を持ち続けていられたことだけ覚えている。
「心配しなくていいけど赤ちゃんが少し小さいから、大学病院を紹介するので明日行ってもらえるかな。」
いつも妊婦検診をお願いしていた先生の言葉。私に心配をさせないように話してくれた。私は淡々としていた。「ゆっくり大きくなっているんだ、きっと」と。
翌日、大学病院の先生と出会う。「今から入院になるかもしれないので、設備の整った病院のほうへ行ってもらおうかな。」この時点でも、私の考えは変わらなかった。決して、妊娠を軽く考えていたわけではない。根拠のない自信が、私には絶えずあったのだ。
午後、私達親子の運命を決してくれた先生と出会う。「赤ちゃんが少し苦しそうですね。」先生は、私を傷つけないよう、赤ちゃんが苦しんでいる状態や点滴や安静をしながら様子を見ないといけないことなど、しっかりと丁寧に説明をしてくれた。そして入院が決まった。
点滴と安静の生活が始まる。ゆっくりのんびりとした気持ちで、赤ちゃんを過ごしやすくしてあげよう!と明るく前向きな気持ちでいた。
入院2日目、朝の検診で前日より状態が悪くなっていることを教えてもらった。
「出してあげましょっか。」
私は笑顔で「お願いします!」と答えた。不安はなかった。赤ちゃんに出会える喜びでいっぱいだった。助けてもらえる、と。
正午、緊急手術が決定。全身麻酔、帝王切開。手術では数時間前に出会ったばかりの助産師さんが笑顔で私の手を握ってくれていた。とても安心した。
793g。男の子だった。
小さくて触れるだけで壊れてしまいそうな赤ちゃんが、がんばって呼吸をして、心臓を動かしてくれていた。
「絶対に幸せな人生が待っているからね、幸せにするからね。」一番にかけた言葉だった。今これだけ辛い経験をしているんだ、この子は幸せになるしかないと思った。
NICUには毎日通った。往復2時間、夢中だった。小さな小さな赤ちゃんが必死に生きようとしている姿に何度も何度も涙した。かわいい愛おしい姿に何度も何度も笑顔をもらった。
私の小さな赤ちゃんは生まれた直後から、お医者さんや助産師さん、看護師さん、たくさんの人に大切に大切に育てられ、2ヵ月半で退院した。
予定より3ヵ月近く早い出産となった。
運命の3日間。
すべては運命だった。いや、この運命を決してくれた先生方に感謝し続けたい。
先生方の迅速な対応、決定が小さな命を授けてくれたのだ。そのことを実感できたとき、感動で胸がいっぱいになった。
赤ちゃんは生後4ヶ月目に入り、4000gを超えている。育児は大変だと感じることもあるが、泣くこと、食べること、息をすること、生きることの強さやたくましさを感じ、24時間一緒に居ることができる幸せをかみしめながら、成長を見守っていきたいと思う。赤ちゃんはたくさんの人に愛され、そしてみんなに大きな幸せを与え続けていく。

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