持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第8回】
~ 赤ちゃんとわたし ~

入選

痛みのその先

神奈川県  パート  28歳

鼻からすいか、骨折より痛い。どれも想像を絶すると
言われる出産の痛みを表現する代表的な言葉です。
案ずるより産むが易しよ、なんて言われても
とんでもない!そんなに気軽に考えられませんでした。
陣痛って、どの位痛いんだろう。
生む瞬間は?初産の私には、全く分からない領域。
正直に言ってしまうと、赤ちゃんが出来たと分かって、
嬉しさと同時に芽吹いた感情は、不安だったのだと
今は思います。産み月が近づき、大きくなっていくのは
お腹だけではありませんでした。
一体、どれ程痛いのだろう・・・。
私、どうなっちゃうんだろう。
どんどん膨らんでくるお腹と、不安。眠れなくなる夜も
ありました。その思いをを払拭しようと、安産だった
人から話を聞いたり、いきみ逃しの方法を調べたり、
とにかく少しでも、安心できる情報を探すのに必死でした。
赤ちゃんに早く会いたい気持ちはありましたが、
根性なしの私に、果たして耐えられるのか、
怖くて怖くて逃げ出したい気分でした。
そんな中、頼みの綱の母は出産の2ヶ月前に他界。
落ち込む私に、ある日先輩ママが電車の中で言った言葉は、
今でもハッキリと覚えています。
「私も妊娠中そんな頃があったけど、ふと、
電車に乗ってるときに周りを見回して思ったんだよね。
ここにいる人達、みーんな生まれてきたんだなぁって。
これだけの人が、生まれてきてるんだから、私にも
何とかなるんじゃないかって思えてきた。
それにね、赤ちゃんが生まれてくるときは狭い産道を、
腕をよじり、小さな頭をもっともっと小さくして、
ママが少しでも楽になるように一生懸命、命がけで
頑張ってるんだから、あなたも頑張らないと
フェアじゃないよ!」
それを聞いて、ハッとしました。そうか、赤ちゃんも
頑張ってるんだ。私が頑張らないでどうする!
そして迎えた出産の日。陣痛の波は予定日当日に
やってきました。夜の闇の中でも、お腹がギューッと、
伸び縮みする感覚がわかりました。
とうとう来た!その後は、大小の波が繰り返し、
繰り返しやってくる感じ。その波の中をゆらゆら、
ゆらゆらサーフィンしているような
不思議な感覚でした。微弱陣痛で一日半かかったけれど、
形容されるような、苦しい痛みではありませんでした。
あんなに怖かったのが、嘘みたいだぁと、ぼんやり思いました。
それはきっと、その痛みの先に希望が待っていたから。
お腹にあてたモニターから聞こえる、赤ちゃんの
元気に脈打っている心臓の音。その音に励まされ、
お腹に力を入れた瞬間、私の体の中から暖かい、
いのちの塊が飛び出すのを感じました。
そして、・・・・元気な産声が聞こえました。
カンガルーケアをしている時に見た、
小さな小さな、手。お腹の中で爪が伸びていました。
最後に見たのは2ヶ月前。私の母の手とそっくりでした。
助産士さんが、爪が伸びているのは、胎内で
元気に育った証拠なんですよ、と教えて下さいました。
お帰り、お母さん。思わず、そう言ってしまいました。
赤ちゃんは、生まれてから、7回顔が変わるという言い伝えが
あるそうです。家族に順々に顔が似ていくのだとか。
私の、夫の、家族の、一人一人がこんなにも
小さな赤ちゃんの中に生きている。
今でも、ふと家族の面影を見るとき
何だかとても不思議な気持ちになります。
痛みのその先に私が見たもの、それは、
優しく、どこか懐かしい、希望が育つ姿、
いのちが循環してゆく姿だったのかもしれません。

ページの先頭へ

電話をかけて相談・問い合わせる

お問い合わせ 0120-01-5050
(9:00~17:40 土、日、祝日、会社休日を除く)

PCサイトを表示する