持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第9回】
~ 赤ちゃんと笑顔 ~

入選

心のバスタイム

兵庫県  主婦  31歳

秋の日の午後。
暖かいリビングにレジャーシートを広げ、お下がりのベビーバスに半分ほどお湯を入れる。
次男の沐浴を一番楽しみにしているのは長男だった。お湯に温度計を浮かべたり、ガーゼを投げ込んだり、次男の服を脱がせる間にレジャーシートも長男の袖口もびしょびしょ。
耳元で小さな拳を固くしているはだかんぼうの次男。小さな足にそっとお湯をかける。
一瞬顔がクシャクシャっとなり、泣くのかと思ったら何もなかったようにすっと元に戻る。
胸元までお湯に浸かると安心して、眉をあげて口を尖らし、ほ~う・・・とため息でも出てきそうな顔。
私の隣にぴったりとくっついて、ベビーバスの縁にそっと手を置いている長男。
次男のどんな小さな動作も見逃すまいと、少し腰を上げ気味で見つめている。
時々私を真似て次男のお腹にお湯をかけ、振り向いて微笑む。
次男のすぼめた唇が一文字に戻った時、眉も下がって目が細くなった。
「笑った。」
長男が嬉しそうに言った。
ほんと、笑ってるみたい。
私も微笑む。
次男が生まれて1ヶ月、長男は1歳11ヶ月。
こんなに小さいのに突然兄になった長男。
次男が生まれてから、彼に何度「待って」と言っただろう。
退院した日からおっぱいとおむつ以外ほとんど寝かされっぱなしの次男。
泣き疲れて眠った顔の涙の跡を、何度指で拭っただろう。
毎日毎日代わりばんこに泣いて、時には同時に泣いて泣いて、途方に暮れた私まで声をあげて泣く日もあったこの1ヶ月。
みんなよくがんばったね。
この午後のリビングだけは穏やかに時間が流れる。
お風呂上がりの次男も、長男と私の手も暖かくていい匂い。
疲れもイライラも忘れて、私の心もベビーバスに浸かったみたいにぽかぽかした。
あれからもうすぐ二年。
今は二人一緒にお父さんとお風呂に入っている。
風呂場に響く二人の笑い声がキッチンまで聞こえてきて、今日も私はぽかぽかしている。

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