出産直後って・・・|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第13回】~ 赤ちゃんとのふれあい ~

入選

・出産直後って・・・

茨城県  主婦  女性  42歳

テレビのドキュメント番組で赤ちゃんが生まれた瞬間お母さんが感激の涙を流して生まれたばかりのわが子を抱いているというシーンをよく見る。
私も子供を産む前はきっとこうしてうれしくて泣いてしまうんだろうなと思っていた。
ところが現実は違っていた。
私は長女を産む前に2度の流産を経験している。
そんな悲しみもあったので絶対に出産直後は感激で涙、涙になると思っていた。
出産自体はそれほど大変ではなく、意外にあっさりと生まれてきた。
それでもピーク時は痛く、苦しいものだった。
「おめでとうございます。女の子ですよ」と言われたような、言われていないような・・・。
その辺はあまり記憶がないのだが、とにかくやっと生まれてくれたという感情は覚えている。
そしていよいよ赤ちゃんとのご対面。
分娩台で寝ている私のもとに看護師さんが赤ちゃんを連れてきてくれた。
最初は「ああ、この子がわたしの赤ちゃんなのね・・・」とうれしく赤ちゃんに触れていた。
けれどそれもつかの間、なんとすぐに「疲れてるから、早く赤ちゃん連れて行ってくれないかな」という気持ちが心の奥から湧き出てきたのだ。
赤ちゃんと対面して涙、涙、涙?いえ、いえ涙なんて一滴も出てこない。
赤ちゃんに会えてうれしい?もちろんうれしかったけど、あんなテレビ番組ほどではない。
こんな私で大丈夫?本当にお母さんやっていけるの?と一抹の不安がよぎる。
でも、いくら待っても赤ちゃんを連れに来ない看護師さんに少し苛立ったのも覚えている。
「もう、早くゆっくり休みたいのに」なんて思っている自分が怖かった。
「では赤ちゃん連れて行きますね」やっと赤ちゃんがいなくなったことにほっとする私。
しかし、待望の赤ちゃんが生まれてきてこんなに喜べないという事実に愕然とする自分もいた。
疲れているんだから仕方がないのよ。なんて自分に言い聞かせながら病室へ戻った記憶がある。
数時間後から授乳が始まった。
体の疲れも取れて、精神的にも落ち着いた私は赤ちゃんが一生懸命おっぱいを吸う姿を見て
初めてうれしさを感じた。ここでやっと母になれたのかもしれない。
やっぱり赤ちゃんはかわいくて、愛おしい存在だった。
出産直後、こんな私でも子育てができるの?と不安だったけれど、あれから13年なんとかかんとか2児の母をやっている。
どうやら無事に母親になれたらしい。
二女を生んだときはどうだったかと言えば・・・。
正直、出産直後に何を感じたかは覚えていない。
そうそう、夫が病院に着く直前に生まれてしまって「ああ、間に合わなかった」そんなことを
考えていた気がする。やっぱり感激はなかったみたいだ。ごめん、娘たち。
出産から数年後、ママ友にこの話をしたら私もそうだったという人が何人もいた。
よかった私だけじゃないんだ。実はそんなもんなのかもね。やっとそう安心した。
出産もいろいろ、ママもいろいろ、感じる気持ちも人それぞれ。
これから出産をする皆さん、感激の涙だけが出産シーンではありません。
「あー疲れた」こんなママもいていいんだよ。

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